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量子力学の冒険(その12)

 現在2021年6月9日19時51分である。(この投稿は、ほぼ4809文字)

若菜「昨日の決着付けて下さい」

私「量子力学を、勉強していくとき、何を目標にしたらいいのか? シュレーディンガー方程式というものを、理解したいのか? それは、それで、良いと思う。ただ、私は、それでは、満足できない口だった」

若菜「じゃあ、何を目指していたんですか?」

私「目の前に、新しい物理現象が、与えられたときに、それを、量子力学として、分析できるだけの、能力を、身に付けたいと、思っていた。要するに、『量子化』と呼ばれる技法を知りたかったんだ」

若菜「それで、分かったのですか?」

私「いや、まだ、分かったというほどではない。ただ、最近気付いたことによると、量子力学というのは、場合、場合で、それに合わせた良い方法を、見つけ出してきた、知識の集積で、これだけ知ってれば、全部分かるなどというものは、ないと言うことなんだ」

麻友「だとすると、何を目標とすればいいの?」

私「つまり、自分の一番知りたいことを、目標にすれば、いいんだ。その目標の例として、私は、核融合原子力発電所は、危なくないということを、麻友さん達に説明することを選んだ」

結弦「それを、ステップにするつもり?」

私「そうだ。この本を、読み始めるための、良い取っ掛かりになる」

麻友「どうやって、説明するの?」

私「高校の物理の参考書を、使ってみる。普通、高校の物理では、今から話す、『原子核』の話は、一番最後で、ほとんどの生徒が、理解する前に、卒業してしまう。だが、この部分には、大学へ行ってから、役に立つことが、凝縮されている。特に、量子力学で必須の、プランク定数 {h} (ハー)というものの使い方を、身に付ける上で、この機会を逃す手はないんだ」

麻友「以前、『量子力学概論(その3)』という投稿で、

『光の振動数を {\nu}(ニュー)と表して、光のエネルギー {h\nu} を『ハーニュー』と読むのに慣れるといいよ』

と、教わったと、言ってた」

私「そう。光のエネルギーと言ったら、即、『 {h\nu} (ハーニュー)』と、返ってくるぐらいにならなければ、ならない」

結弦「それを、どう使うの?」

私「まず、{h} (ハー)という数の大体の大きさを、知っている必要がある。私は、高校時代、{h=6.6 \times 10^{-34}} と、覚えるように言われた。これは、そんなに難しくない。{5.6 \times 12^{-34}} と、{123456} を、並べて、{12^{-34}} じゃ変だから、{10^{-34}} とし、{5.6} じゃなくて、{6.6} だったなと直せば、{h=6.6 \times 10^{-34}} は、すぐ出せる。とにかく、マイナス34乗というのが、重要なんだよ。物理の定数で、マイナス34乗なんて小さいのは、これだけなんだから」

若菜「単位は?」

私「これも、簡単なんだ。{h\nu} (ハーニュー)が、エネルギーなんだろ。エネルギーの単位は、熱量と同じで、{1 \mathrm{cal}=4.2 \mathrm{J}} なんだから、ジュールだ。そして、{\nu} が、振動数だから、1秒間に何回か、つまり、{\mathrm{1/s}} だ。{h\nu} の単位が、ジュールで、{\nu} が、{\mathrm{1/s}} だから、{h} の単位は、{\mathrm{J~s}} だよね。『ジュールびょう』と読んで、十分通じる。『ジュールセカンド』でも、いいけどね」

麻友「太郎さんの言うの聞いてると、すっごく易しいことを、しているみたいだけど、どうなのかしらね」

私「私が、学生の頃は、プランク定数は、実験値だったので、沢山覚える必要がなかった。でも、2018年に、定義定数になった。{h=6.62607015 \times 10^{-34} \mathrm{J~s}} は、暗記してしまった」

結弦「うそ~」

私「このブログのURL見て御覧」

若菜「あっ、662607015。プランク定数なんだ。量子力学のブログだから」

結弦「凄い、常人には、真似できない」

麻友「それで、これを使って、核融合原子力発電所は、危なくない、は?」

私「実際に、私の物理の参考書の問題を解いてみよう」

萩原茂夫『くわしい物理の新研究』(洛陽社)

の401ページから。


例題1 真空中の{\mathrm{Ba}}(仕事関数:{2.51~\mathrm{eV}})の金属表面に波長{2700\stackrel{\circ}{\mathrm{A}}} の紫外線をあてたところ,その表面から光電子(電荷{-1.602 \times 10^{-19} \mathrm{C}} )が出た。このとき出てくる光電子の初速度は何ほどか。ただし電子は{\mathrm{Ba}}金属の中で静止していたものとする.


若菜「きっと、お父さんのことだから、高校時代も、一番詳しくて、難しい参考書を選んだんでしょうね」

私「いや、私は、わざと難しいものは、選ばない。ただ、詳しいものは、大歓迎」

結弦「この問題、どういう問題なの?」

私「実は、これの説明、前にしてある。光電効果なんだよ。『量子力学概論(その3)』のときの」

麻友「そっか。だから、光電子という言葉があるのか」

私「今は、『波長{2700\stackrel{\circ}{\mathrm{A}}} の紫外線』という言葉があるけど、とにかく、波の話が出たら、次の式を、思い浮かべて。{v=f\lambda}(ブイイコールエフラムダ)。まず、{v} は、{velocity} つまり、音だったら音速、光だったら光速。次に、{f} は、{frequency} で、振動数。{\lambda} は、波長。つまり、波の一区切りの長さ。この、{v=f\lambda} は、波の一区切り分の長さを、1秒間の振動数だけ足し合わせたら、1秒間に波が進む速さ、つまり、音速または光速になるよ。という式なのだ。こういう風に、確認の仕方は知ってるけど、毎回確かめなくても使える公式は、ほんの少しだけど、覚えた方が良い」


若菜「それで、例題1は?」

私「差し当たって、原子核の外の、電子やなんかが、動いているときのエネルギーを、知りたいので、解答を写すよ。{\mathrm{Ba}} は、バリウムという元素の元素記号{v=f\lambda} は、光速度は、{c} になり、振動数は、{\nu} だから、{c=\nu\lambda} を用いることになる。光子のエネルギーは、{h\nu=hc/\lambda} のはずだけど、金属から飛びだすのに、仕事関数と呼ばれる、一定のエネルギーを関税のように、払わなければならないので、{2.51\mathrm{eV}} というエネルギーが、引かれたものが、光電子のエネルギーだ。{\mathrm{eV}}{\mathrm{e}} は、電子1個の、電荷にマイナスを付けたもの。つまり素電荷。私は、{1.602 \times 10^{-19} \mathrm{C}} と、暗記している。実は、これも、2018年に、定義定数になった。素電荷は正確に、{\mathrm{e}=1.602~176~634 \times 10^{-19} \mathrm{C}} である。{\mathrm{V}} は、電圧のボルト。これで、『エレクトロンボルト』と読む。これらを、用いて、波長が、オングストロームで、書かれていることに、注意して計算すると、力学のブログで、運動エネルギーは、{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2} だったことを思い出して、次のようになる。」


解 光電子の運動エネルギー{E_k} は光子のエネルギーから {\mathrm{Ba}} の仕事関数だけ差し引いたものに等しいから

{\displaystyle E_k=hc/\lambda-(2.51 \times 1.602 \times 10^{-19} )}

{\displaystyle =(6.626 \times 10^{-34}) \times \biggl(\frac{3.0 \times 10^8}{2.7 \times 10^{-7}}\biggr) -(2.51 \times 1.602 \times 10^{-19} )}

{=3.3412 \times 10^{-19}}

電子の質量{m}{9.11 \times 10^{-31}\mathrm{kg}} であるから,求める速度{v}

{\displaystyle v=\sqrt{\frac{2E_k}{m}}=\sqrt{\frac{2 \times (3.3412 \times 10^{-19})}{9.11 \times 10^{-31}}}=8.57 \times 10^5 \mathrm{m/s}}



若菜「これ、合っているんですか?」

結弦「電子の初速度が、秒速800キロメートルということでしょ」

麻友「地球の太陽の周りの公転速度が、秒速30キロメートルだったけど」

私「計算に間違いはない。本当に、これくらいの速さで、飛び出してくるようだ」

結弦「何が、原因なんだろう」

私「紫外線だ、というのが、原因の一つだ」

麻友「あっ、だから、サングラスとか、UVカットとか、重要なんだ」

私「ただ、ここに、重要な問題が、隠れている。光子は、粒として振る舞うという性質だ」

結弦「粒だとどうなるの?」

私「紫外線の光子の持っている、一粒一粒の、光子のエネルギーを、丸ごと1個分ずつ、1個ずつの電子に与えているということなんだよ」

若菜「何か、変なんですか?」

私「1個の光子が、例えば、ツバメの親鳥が、ヒナ達何羽にも、ハイハイと、エサを口移しに、次々与えるようなことを、できなくて、自分のエネルギーのすべてを、ひとつの電子に与えることしか、できないんだよ」

麻友「つまり、量子を分けられない、ということ?」

私「そう。これを、用いて、次回、核分裂原子力発電所は、危ないけど、核融合原子力発電所は、危なくないという、話をしよう。そして、『量子力学の冒険』を、読むときの、目標のひとつを、確認しよう」

結弦「なんか、お父さんって、すっごいこと考えながら、物理学の本読んでいるんだなあ」


麻友「今日は、これから、ポートなんでしょ。気を付けていってきてね」

私「ありがとう」

 現在2021年6月10日10時46分である。おしまい。