場の量子論を制覇しよう!

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量子力学の冒険(その14)

 現在2021年6月13日18時30分である。(この投稿は、ほぼ6250文字)

麻友「本気ね」

私「核融合原子力発電所は、危なくない、と、説明するのは、そう易しいことではなかった」

麻友「私が、分かるところまで、説明しようとするからじゃない?」

私「麻友さんが、分からなかったら、日本人のほとんどが、分かったことにならない」

若菜「お父さんは、ドラえもんで描けなかったら、駄目な人ですから」

結弦「夜空のお星様が、なぜ光っているのか? 2015年の付き合い始めたばかりの頃からの、約束だものね」

麻友「核融合って、お星様が、何億年も光っていられる理由か。なぜ、太郎さんが、こんなに本気になるのか、分かってなかった」


私「あっ、もちろん、エネルギー問題を、解決するために、全力を上げているんだけどね」

結弦「核融合の核反応。昨日、計算の途中だったけど」

私「そうだったな。



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 星の内部で起こっている一連の核融合反応のなかで次のような核反応がある。

{\mathrm{{}^1_1H+{}^3_1H \rightarrow {}^4_2He+20.7 MeV}}   (♯)

 ここで、原子核の質量を比較してエネルギーを計算してみよう。

{\mathrm{{}^1_1H}}{\mathrm{{}^3_1H}}{\mathrm{{}^4_2He}} の質量はそれぞれ {\mathrm{1.0078~amu,~3.0170~ amu,4.0026~amu}} であるから、


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と言って、


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{(1.0078+3.0170)-4.0026=0.0222 (\mathrm{amu})}


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という計算をした。消えた質量が、{0.0222 (\mathrm{amu})} ということは、{\mathrm{amu}} は、陽子1個の重さを単位にした質量だから、陽子1個の質量を、{\mathrm{MeV}} の単位で測ると、{\mathrm{937~MeV}} くらいだったから、参考書では、{\mathrm{937~MeV}} のところが、{\mathrm{931~MeV}} となっているので、


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{E=931\times 0.0222=20.66 \mathrm{MeV}}


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と、計算してあって、{937} でも、{20.8\mathrm{MeV}} と、ほとんど変わらず、大体、{20.7 \mathrm{MeV}}

で、(♯)の式の右辺が、確かめられた」


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{\mathrm{{}^1_1H+{}^3_1H \rightarrow {}^4_2He+20.7 MeV}}   (♯)


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麻友「えっ、この {\mathrm{20.7 MeV}} を、確かめるためだけに、この計算をしていたの?」

私「麻友さんに取っては、凄い計算だろうが、理論物理学者にとって、こんなの序の口だよ」

結弦「それだけ、理論的に予言できるんだね」

私「さて、この参考書、さらに読み進めるよ」


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[例] 太陽の物質には高温の水素({\mathrm{H}})やヘリウム({\mathrm{He}})があって,高速の陽子({\mathrm{{}^1_1H}}),重陽子({\mathrm{{}^2_1D}}) や{\mathrm{He}} 核がとびまわり,衝突して核融合反応を起こしていると考えられる。その反応式は

{\left\{ \begin{array}{l} \displaystyle

\mathrm{{}^1_1H+{}^1_1H \rightarrow {}^2_1D+e^{+}+0.93 MeV+\nu}   (♭-1)\\
\mathrm{{}^1_1H+{}^2_1D \rightarrow {}^3_2He+\gamma+5.5 MeV}     (♭-2)\\
\mathrm{{}^3_2He+{}^3_2He \rightarrow {}^4_2He+2{}^1_1H+12.8 MeV}  (♭-3)

\end{array}\right.}


(♭-1){\times 2+}(♭-2){\times 2+}(♭-3)

{\mathrm{6{}^1_1H \rightarrow {}^4_2He+2{}^1_1H+2e^{+}+2\nu +2 \gamma+25.7 MeV}}   (♭-4)

 整理して、

{\mathrm{4{}^1_1H \rightarrow {}^4_2He+2e^{+}+2\nu +2 \gamma+25.7 MeV}}

 ここで,{e^{+}}陽電子{\nu} :中性微子,である。電子の質量 {m_{\mathrm{e}}} をエネルギーに換算すると

{m_{\mathrm{e}}=9.11 \times 10^{-31} \mathrm{kg}=0.511 \mathrm{MeV}}

 また,中性微子の質量はほとんど {0} とみてよい。


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私「時代の移ろいを感じるのは、中性微子という言葉を、使っているところ」

若菜「小柴さんのカミオカンデの、ニュートリノですよね」

結弦「カミオカンデスーパーカミオカンデ、って、本当は、なぜ作ったの?」

私「クオークモデルがいうように、陽子が崩壊するかどうか確かめようということで、普通は見つけにくい、ニュートリノを、検出するために作ったというのは、本当なんだと思う。ただ、ここからは、私の想像だけど、スーパーカミオカンデって、あの中に、超純水(もの凄く綺麗な水)が、5万トンも、入っているのね。だから、地球に大きな隕石が衝突したり、核戦争が起きたりして、地上の水が、全部汚染された場合に、最後の水として、使えるかも知れない」

麻友「太郎さんは、そういう想像を、するんだ」

私「選択肢を沢山持っているのは、良いことじゃない?」

結弦「それで、先を知りたいんだけど」



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 [例] にあげたような核融合反応は、星の内部で行われるものであり,その反応速度も非常に遅い。しかし,実験室でも,これをヒントとして,もっと速い核融合反応を適当な原子核で,しかも適当な条件のもとで人工的に制御することが考えられる。

 現在のところ,採用できる熱核融合反応は


{\mathrm{{}^2_1D+{}^2_1D \rightarrow {}^3_2He+{}^1_0n+3.3 MeV}}   (1)

{\mathrm{{}^2_1D+{}^2_1D \rightarrow {}^3_1T+{}^1_1H+4.0 MeV}}    (2)

{\mathrm{{}^2_1D+{}^3_1T \rightarrow {}^4_2He+{}^1_0n+17.6 MeV}}   (3)

{\mathrm{{}^3_2He+{}^2_1D \rightarrow {}^4_2He+{}^1_1H+18.3 MeV}}  (4)


の4段階である。

 (1),(2)は、{\displaystyle \frac{1}{2}} の確率で起こり,D-D反応と呼ばれる。(3)はD-T反応と呼ばれる。{\mathrm{{}^2_1D}} は、{\mathrm{{}^2_1H}}{\mathrm{{}^3_1T}} は、{\mathrm{{}^3_1H}} と同じものである。


 (1)~(4)の反応を起こさせるには、ちょうど落ち葉たきをするのにマッチで火をつけるとき,しばらく火をつけたまま加熱しておかないとすぐに消えてしまうのと同様に,ある一定の時間の間,点火温度で保っておく必要がある。計算によると,経済的な要素も考慮に入れて,約{\mathrm{10^8~K}} 以上の温度で,D-T反応では {0.1} 秒,D-D反応では {10} 秒の間持続させることが必要条件になっている。この程度の温度では,物質はすべて電離してしまって高温プラズマのガス集団になる。プラズマは固体,液体,気体に次いで第4の状態といわれるのはそのためである。

[参考] 未来の核融合炉 {\mathrm{10^8 ~K}} のプラズマを入れる容器はどんな耐火レンガでも溶けてしまい,役に立たなくなる。プラズマは帯電粒子の集団であるから,適当な形の磁力線をした強い磁場を用いてうまく空間に保持することができそうである。もし核融合炉ができれば,強い磁場中で重水素プラズマやトリチウムの混合プラズマを燃料にして発電することができる。ただし、トリチウム放射性元素である。

 重水素は海水に含まれるのでエネルギー源としては無限に近く,また,核分裂の場合のような放射性物質の灰はない。しかし,いまのところ,次の諸問題が未解決のままになっている。

 ①プラズマ粒子を目的の温度まで加熱すること。

 ②プラズマ粒子を高温のまま必要な時間保持すること。

 ③高温プラズマからのエネルギー損失をできるだけ防止すること。


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       萩原茂夫『くわしい物理の新研究』(洛陽社)(p.p.432-433より)


麻友「えっ、これで、終わり?」

若菜「放射能のこととか、『トリチウム放射性元素である』だけしか、書いてない」

結弦「他に、放射性物質は、関係しないの?」

私「お前たちは、そんなことを、言うが、1989年、高校3年生で、将来物理学で、大発見をしようと思っていた私は、この『トリチウム放射性元素である』という言葉に、過敏に反応した。『核融合でも、放射線出るんだ。ガッカリ、ガッカリ』、それ以来、上に①~③と挙げてある、プラズマの課題も、研究しなかった」

麻友「そもそも、太郎さん。プラズマの本なんて、持ってるの?」

私「実は、1冊だけ持ってる」

リフシッツ/ピタエフスキー(ランダウ理論物理学教程第10巻)『物理的運動学』


 訳本


麻友「この訳本も、持っているの?」

私「横浜市立図書館に、1冊ずつある。貴重な本だ。洋書を読むとき、参考にさせてもらうつもりだ」

麻友「だって、太郎さん。まだ1巻も、読み切れてないものね」

私「ランダウ理論物理学教程、そろそろ、読み始めないと、ボケる前に読み終われない」

若菜「お母さんに説明するなんて、諦めたら?」


私「いずれにせよ、高校3年生だった、1989年から、32年経っているんだよ。プラズマの課題は、解決しているはずだ」

結弦「そうかもね」

私「あと、放射性元素だというトリチウム{\mathrm{{}^3_1T}})なんだけど、理化学辞典を引いたら、『発電用原子炉の中でも生成するが,その量は100万kWの原子炉1基につき年間 {1\mathrm{g}} 程度である』と、書いてあったんだ」

若菜「お父さん。安全だと知ってたんじゃない」

私「これは、麻友さんに会った後、シンガポールから、わざわざトントン工房に、来た人がいて、その人から、『核融合発電は可能ですか?』と、質問された。私は、『核融合でも、放射線は出るんだよ』と応じた。そのときになって、もう一度、あの参考書を見返した。そして、得意の理化学辞典で、『トリチウム』と、引いた。2018年5月28日19時37分46秒と、メモがある」

麻友「29年経って、核融合原子力発電、安全だと、気付いたのね。でも、福島第一原発トリチウムの汚染水、海に放出するってのは、どう思う?」

私「トリチウム半減期って、12.32年なのね。考えようによっては、かなり、のろい。しかも、ウランみたいに、核分裂して、トリウムになって、さらにパラジウムになって、ラジウムになって、・・・と、そのたびに、放射線を出すようなことはない。核分裂原子力発電所で、1年につき {1\mathrm{g}} だから、核融合原子力発電所でも、年間 {1\mathrm{g}} だなんて、安易には言えないけど、放射性廃棄物が何トンもコンクリートで固められて、それをどこに廃棄しようか、などとニュースになるような、みっともないことは、起こらないはずだ」

麻友「トリチウムの汚染水は、大丈夫なの?」

私「『放射性物質の入った水だ』という先入観と、『放射線を浴びたら、ガンになる』、という余りにも子供みたいな科学の知識しかない。広島の原爆を浴びた人達みたいなことは、絶対起きないし、それが、分かる程度には、科学を学んで欲しい」

若菜「でも、お父さんでも、29年かかって、気付いたぐらいなんだから、普通の人に、それを分かれっていうのは、無理です」

麻友「それより、一応、核融合の話を聞いたけど、あの、核反応の式、私読み方、全然分かってないわよ。核分裂の話と共に、聞きたいわ」

私「昨日、22時半頃まで、書いて眠って、今朝8時半から書いている。すでに、6094文字になっている。一旦投稿しよう。今日は、通院なんだ」

結弦「入院しそう?」

私「落ち着いているから、多分大丈夫でしょう」

麻友「じゃあ、行ってらっしゃい」

若菜・結弦「行ってらっしゃーい」

私「行ってくるよ」

 現在2021年6月14日10時00分である。おしまい。